屋上緑化実践事例・取材日記
「南山大学瀬戸キャンパス・屋上庭園」の巻

この場所に屋上庭園をつくることになった経緯や、現在の維持管理について「南山大学 瀬戸キャンパス事務部」の森 義明さんにお話を伺いました。インタビューは、東邦レオ株式会社 森谷 一彦です。

【インタビュー内容】

森谷

宜しくお願いします。瀬戸キャンパスは愛知万博の開催予定地「海上の森」に近く、自然環境に恵まれたところにありますね。先程、図書館の上に広がる屋上庭園を見させて頂きましたが、とても見晴らしが良かったです。この瀬戸の地が選ばれたのはどのような理由なのですか?

森さん

緑に囲まれた瀬戸キャンパス
緑に囲まれた瀬戸キャンパス

(パンフレットより)もともとこの場所には名古屋聖霊学園の短期大学、高等学校、中学校があり、1995年に南山学園と合併しました。その後南山大学に新学部が増設されることになり、自然豊かなこの地が新キャンパスとして選ばれました。


森谷

2000年4月の開設から約1年半が経ちました。実際、屋上の芝生広場の利用度合いはいかがですか?

森さん

図書館の屋上につくられた芝生広場
図書館の屋上につくられた芝生広場

語らいの場として、昼食時にお弁当を広げている学生が多いですね。また学祭などのイベントやスポーツでの利用など、この芝生広場は多岐に利用されています。 憩える空間として有効に使われていると思いますよ。大学には日本各地だけでなく、海外からも多くの留学生がこられています。その中には雪を見るのが初めてという人もいて、雪の日に屋上庭園の傾斜を利用して、みんなで雪だるまを転がしながらつくっていましたよ。

森谷

よく使われるとなると、管理される側の森さんとしては大変ですね。

森さん

そうですね。使っていただけるのはとてもうれしいです。でも野球ぐらいならいいのですが、サッカーになると芝生を痛めてしまうことがあるので、今試験的に1部分に保護ネットを入れて状況を見ているところです。

森谷

芝生広場の維持管理として、散水も大きなテーマだと思います。屋上庭園の散水には、自動灌水設備としてタイマーコントローラーと点滴式灌水ホース[ラムホース]が利用されていますね。維持管理の中では、自動灌水以外に補助として手巻き散水も行なわれているのですか?

森さん

屋上庭園部分を6ブロックに区分けして、夕方の19時頃から各ブロック30分程度自動灌水を行う設定になっています。特にそれ以外の散水は行っていませんが、自動灌水設備が入っていないところでは、簡易スプリンクラーを利用して散水を行なっています。

森谷

散水以外の維持管理作業はありますか?

森さん

芝生広場については、芝刈りでしょうか。夏シーズンには2回程度の芝刈りを行いました。植栽地全体の管理は、造園会社さんに委託しています。月に1回程度見て頂いています。基本的には剪定のような一般的な庭園と同様の管理内容だと思われます。

森谷

他に気になるところはありますか?

森さん

立ち上がり部分の上は、土壌が少ないこともあり、芝生が擦れやすいことがあげられます。

森谷

緑化前の現場 土留め壁立ち上げ状況
緑化前の現場
土留め壁立ち上げ状況

屋上庭園は傾斜地での緑化のため、ところどころに土留め壁がたてられています。今回は土壌には保水力の強い人工土壌[ビバソイル]が利用されていますが、この上部の空間は土壌量が少なくなってしまいますね。

森さん

対策として盛り上げるようなかたちで土壌を入れています。

森谷

特に傾斜を利用した芝生広場の場合、景観上全面を覆うケースが多いため、土留め壁や表面排水の受け口となる排水溝との兼ね合いが難しいですね。今後の課題だと思います。そもそも、この図書館の屋上に芝生庭園をつくられたきっかけはどのようなものなのですか?

森さん

名古屋キャンパスの芝生広場
名古屋キャンパスの芝生広場
(パンフレットより)

この屋上庭園は、1つは学長の発想なんですね。南山大学の名古屋キャンパスには、広大な芝生の広場があります。他の方が見られて、芝生広場がうらやましいと言われることもあります。瀬戸キャンパスの開設においても、名古屋キャンパスのような学生が集えるゆとりの空間が欲しい。芝生広場をどこかに作ろうということからアイデアが始まっています。ここは平地ではないので、それならば図書館の上につくろうということになって行きました。一見無駄に見えるスペースかもしれませんが、やはり南山大学にとって芝生広場は重要な要素を持っています。


森谷

南山大学にとって、芝生広場はあることが当然という感じなのですね。こういう背景がバックボーンになっているとスタートが違いますね。芝生広場を「つくろう」とか「つくらないでおこうか」という議論ではなく、「どこにつくろう」かという前向きな発想なんですね。それが今回はたまたま屋上庭園になったわけですね。

森さん

愛知万博会場がすぐ近くということもあり、建築当初から緑の中で憩える場所をつくろうということで、維持も含めて緑化に関しては重要な要素でした。

森谷

図書館は、広場側から見ると一面芝生に覆われているので、周囲の風景に同化している感じがします。また大学の入口から見ると、木々の間に囲まれていて、こちらもあまり目立たないような配置になっていますね。今後緑の空間をどう変化させていくかという話は出ているのですか?

勾配屋根面の外部と内部。 勾配屋根面の外部と内部。
勾配屋根面の外部と内部。中は広々としていて特に圧迫感は感じられない

森さん

そうですね。屋上に広がる庭園には、芝生以外の低木が植わっていますが、本当はそれらを取ってしまって、芝生をもっと広げたいとも思っています。

森谷

貴重なお話をどうもありがとうございました。

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